フィンランドの育児制度は
かなり機能していると思います。
フィンランドに住む女性の多くは、もっと子供を
産んでもいいと思っているのではないでしょうか
出生率上昇につながるフレキシブルな育児の形
「イタリア、ポルトガル、スペインの3国は、30年前まではヨーロッパの中で出生率が高いグループでしたが、現在では最も低いグループになってしまいました。一方でフィンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの北欧に加えて、アイルランドが出世率のトップグループとなりました。この背景には、もちろん宗教もあるかもしれませんが、デイケア制度がしっかりしているということもあるでしょう。また男女同権の意識がしっかりしているということもあると思います」。
フィンランド大使のヨルマ・ユリーンさんは、はっきりとした口調でこう語る。
「我が国ではこの20〜30年で男女同権意識が確実に進んできました。大統領も女性ですし、政府閣僚の半数強も女性です。そのように男女同権意識が浸透すると共に、母親だけでなく父親も子育てに参加することが当たり前になってきたのです」。
社会保障に関しては、母親休業と両親休業を合計して263日。休業中の所得についても給料の%が保70証される。フィンランドでは0歳児の子供を持つ親が、仕事と子育ての両立することへの障害はほとんどないといわれている。
「私の実の娘夫婦の話です。義理の息子はアメリカの多国籍企業で働いていてとても忙しい。娘ももちろん働いています。子供が生まれたとき、まず彼が5ヶ月の育児休暇を取って、その間娘が働いていました。その後に娘がもう少し長めの育児休暇を取って子供の面倒をみました。こういったフレキシブルな子育ての形は、フィンランドの夫婦の間でとても一般的になってきています。フィンランドでは、男女が育児や家事をシェアする比率は、まだまだ女性のほうが多く、50対50とはいえませんが、とは確かです」。
自治体主導の保育制度で仕事をしながら親になる
フィンランドで市町村などの自治体が運営主体とする自治体保育サービスが制度化されたのは、1970年代に入ってからのこと。そこから保育教師のレベルの向上など、急速に充実していったという。ユリーンさんが高出生率の要因のひとつとしてあげている「充実した保育施設」とはどのようなものなのか?
「フィンランドのデイケアセンターでは、まず創造力などの〝学ぶための術〟を教えます。お絵描きでも芸術でも何でもいいのですが、想像力をもっと使わせる教育法を実施しています。また多くの国の教育と違う点は、上から下に抑圧的に教えたりしないということ。単純に言ってしまえばとても自由ですね。デイケアセンターには、様々な背景を持った子供たちが通っています。だから一定の行動、一定のしつけが行きわたるのに時間がかかるのは仕方がないと思います。でもあまりにもひどいことをしなければ、罰を与えたりはしません」。
全ての子供たちにデイケアセンターに通う権利が与えられているフィンランド。しかしそれはあくまでも強制ではなく任意とのこと。
「家庭で子供の世話をすることも可能です。〝ファミリーデイケア〟といって、最高で4人まで、お母さんが自分の子供プラス3人を自宅に集めて保育ママとして面倒をみることもできます。デイケアセンターでもファミリーデイケアでも、両親に給付される手当は同額です」。
ヘルシンキのような大都市では24時間体制のデイケアセンターもあり、特に片親などの家庭に利用されている。そんなデイケアセンターの充実によって、母親たちは仕事のキャリアを諦めることなく子供を産むことができるという。さらに父親たちの育児休業を充実させることによって、男女同権も実現しているフィンランド。「男女同権」が少子化問題に関する重要なキーワードであることは間違いないようだ。■
FQ JAPAN vol.8(2008.9月1日発売号より)
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