何を食べるかは予想不可能
書類の束の上に、塀や壁に使うあのレンガが置いてあったのだ。これはホントの話。しかも、証拠に彼女の歯型までついていた。そういえば、彼女が炭を舐め始めたという話も聞いたことがある。鉄分補給ならサプリメントで十分なはずだ。しかし血糖値が下がったり、ホルモンのバランスが崩れてしまうとこういう行動に走ってしまうこともあるらしい。
さらには特定のものに対する過剰な食欲は、何かが欠如しているから起こるのであって、それを補おうとして思いもよらないものに飛びついたりしてしまう。レンガの件は確かに笑える話であるけれど、実際のところあまり特異な食欲があったら、ドクターに相談するべきかもしれない。もしかしたら、深刻なミネラル欠乏症かもしれないし。
好き嫌いの激しいお嬢ちゃまたち
食に絡んで妊娠中に起こる変化にはもう一つ、好き嫌いが異常に激しくなるということがある。今まで好きだった食べ物なのに、見るだけで突然吐き気をもよおしたりすることもある。その期間は数週間だったり、数ヶ月だったりと人それぞれだ。
妊娠中、女性の嗅覚は繊細になり、もちろん味覚もその影響で変化するという。その結果、気持ち悪さを感じない「安全」な食べ物を捜し求め、それに固執することになる。だからこの時期は、男も毎日同じ物を何度も食べることになるだろう。彼女が料理するのは同じ物ばかりだし、自分で作れるものといえば1つか2つでしょ?
僕のパートナーのリサの場合はラム肉だった。本当に生で食べちゃいそうな勢いだった。彼女が牧場に乗り込んで、1匹まるごと持ってくるほどの体力がなくて本当に良かった。ちなみに僕は、ミレニアム以来、ラムは一切食べてない。
この2つの相反する矛盾した感情が起こるのは、最初の妊娠ではごく自然のことで、その感情は99.9%、生まれてきた赤ちゃんを一目見たとき、もしくはそれより早く、完全にどこかへ消えていくはずである。
嫌なものは嫌なのよ!
嗅覚が敏感になることと、赤ちゃんの安全を守ろうとする潜在意識とが合わさって、食べ物だけじゃなく、毎日の活動や移動手段にまで影響が出るようになることもある。前はやらなかったことを突然やり始めて、時には“やりすぎ”ってくらいにやるようになる。例えば、歩くのが好きになって、ポテトチップスを買うために近くの店でなく、なぜか10キロ先のスーパーまで平気で歩いたり、そうかと思うと次の日は歩くのが嫌になって、君が帰宅して買い物に行ってくれるのをじっと待っていたりする。
僕が取材した中では、好きだったはずのテレビ番組が、主人公の声がいらいらするとか、ストーリーのくだらなさにうんざりするとかで急に嫌いになったという人もいたし、セックスが嫌になった人もいる。またある人などは、旦那が嫌になっちゃったなんて例も。それはもちろん、一時的なことだったのでご心配なく。
もう一つの例では、まだ妊娠して間もないのに車を運転したくないと言い出したということも。「事故を起こしたら大変」と思うのか、それとも、妊娠12週間目で出産はずっと先なのに、「運転中に陣痛が起こったら……」などと心配なのか。しょせん傍観者でしかない僕たちには、彼女たちの考えることや突飛な行動は、理解し難くて動揺するだけだ。
しかし、当事者の彼女たちにとっては、どんな小さな不安も心配事も、何かに対する嫌悪感だって目の前にある現実で、ひとつひとつが大変なことなのだ。だから彼女があなたに「無関心」そして「嫌悪」、さらには「敵意」すらも表すようになることは覚悟しておこう。その3つのどれが先にきて、どれが極端なのかは予想不可能。なるべくそうならないようにするには、言動に気をつけること。あなたが持つ手段はそれしかない!
つづく
ジョン・スミス
世界的ベストセラーとなった「The Bloke’s Guide to Pregnancy~野郎のための妊娠ガイド~」の著者でもあり、英国版FQをはじめ多くの育児雑誌でコラム等を執筆する。




















