子供を型にはめないようにするのがデンマーク流。
私たちの国の家庭や保育園をあなたたちが見たらカオスに感じてしまうかも(笑)
世界一の幸せってなに?そのヒントが北欧の一国に
その国民が住む国とは、デンマーク。90カ国1万人を対象にしたアンケートで、なぜこの国が幸福な国に選ばれたのか? デンマーク大使館へ伺い、公務参事官イェスパー・ヴィーベ・ハンセンさんに疑問をぶつけてみた。
「理由はいろいろあると思います。個人の自由の尊重、健全な政治と社会、男女平等――。
子供を健やかに育てやすい、というのも魅力に映ったはず」
FQとしては、最後の返答項目が気になるところ。デンマークの育児事情の詳細を改めて聞くと「まず、保育所・幼稚園のあり方や子供の扱い方が特徴的」と即答。共働きの多いデンマークでは保育施設が重要だ。同国には「乳児保育園」(6カ月〜2歳)、「保育園」(3〜6歳)に加え、「学童保育」、保母が自宅で子供の面倒を見る「家庭的保育」などがあり、各家庭がニーズに合わせて施設を選べる。
保育者1人に対し幼児6〜7人(日本は20〜30人)という「保育園」をはじめ、各施設にそれぞれ特徴はあるが「共通しているのは子供の個性と独創性を尊重すること」(ハンセンさん)。みんなヨーイドンで同じ遊びをさせる日本と違い、子供の自主性に任せて各々がやりたい遊びをさせるのがデンマーク流。おやつ時間も決めず、お腹が空いた子には随時コンフレークを与えるなど、子供の遊びを邪魔しないよう配慮している。
「この考え方は家庭でも一緒。例えば無理矢理ヴァイオリン教室に行かせるということもしないし、しつけも厳しくしない。日本の人が私たちの家庭や保育園を見たら、子供たちが元気すぎてカオスに感じてしまうかも(笑)」
また、小・中・高・大学の学費がすべて無料というのも両親にはうれしい制度。定期的に見てもらえる無料の家庭医、0歳〜18歳まで年4回支給される「子供小切手」という経済援助などと合わせて考えると、育児に関するお財布の心配はグッと軽減しそう。
実際にここ数年の同国の特殊出生率を見てみると1・7以上と先進国上位をキープしており、これら諸施設・諸政策の効果はあるとみていいだろう。
「しかし、25年前のデンマークの出生率は1・35まで落ち込んだこともありました」とハンセンさんは一瞬表情を引き締める。それは女性の社会進出を、1960年代から国や企業が推進したことで生まれた副産物であった。女性が就労するなかで” 主婦業“へ割く時間が減少すると見越し、出産を控えようとしたのはある程度自然な流れ。
この流れを止めるべく、デンマークではいくつかの政策を打ち出した。
1つは1984年に導入された“父親の出産休暇”の導入だ。母親の産後2週間後と産休2週間後に父親が休暇を取れるこの制度は、父親の育児参加への意識を拡大。パパ・クォター(父親しか利用できない育休)の取得率上昇にも繋がり、育児の男性参加が進んだ。ハンセンさんは「大使館にもファミリーケア・デイがあり、3カ月毎に2日ほど家族と過ごすための特別休暇も取得できます」と付け足した。
“育児の男女分担”に加えて、もう1つ出生率回復に大きく関与したのが“労働の分担”。男女だけでなく老若にも仕事を振りわけるワークシェアリングを国や企業が推し進めることで、一人一人の勤務時間が少しずつ減少。これにより、母親のみではなく祖父母や夫にも育児に関われる時間が生まれたのだ。
「今、我が国の失業率は3・6%と、EU諸国の中で最も被雇用側の有利な国。労働時間の基準や育児休暇など雇用条件がしっかりしていない企業には、人材が集まらないと思います」
こうして作り出された家族ふれあいの時間を、デンマークの人々はスポーツやキッチンでの料理などに費やす。
「キッチンは、家族で過ごすための大切な空間。みんなで料理を作ったり家族全員で団欒したりと、単純にクッキングするだけの場ではなく、コミュニケーションの場でもあるのです」ハンセンさんも厨房に立つの? という問には「僕はグッド・コックじゃないから(笑)」と苦笑い。
しかし、平日仕事の日でも、余裕があればランチをしに家に帰るというハンセンさん。グッド・コックでなくともデンマークの父親を象徴するような家族思いのグッド・ダッドであることは間違いない。■
FQ JAPAN vol.5(2007.12月1日発売号より)











