女性就業者の約68%がパートタイマーであるオランダでは、給料や休暇、年金などの待遇面で、フルタイム労働者との差別を禁止しています。
フレキシブルな働き方が出産への安心感を生む
そのオランダ、実は売春やマリファナの合法化という大胆な政策を実施する国としても有名。そんなこの国には、日本では想像しにくい働き方が世界の注目を集めているという。
日本との大きな違いとして着目したいのは、産後女性の就業率だ。日本の女性は、結婚・出産・育児を機に仕事を辞めてしまう人が約7割にも及ぶ。6歳未満の子を持つ母親の就業率に限ってみると、日本は35.6%に対し、オランダは61%と高水準。このように日本に対して、圧倒的に水をあけるオランダ。そもそも、つい30年ほど前までは、日本と同様に「女性は家庭、男性は仕事」という風潮が非常に強かったんだとか。では、女性の就業率において、いったい何が両国をこんなにも分け隔てたのだろうか?
その秘密は、世界一の就業率とも称される「パートタイム労働」という働き方にある。
「パートタイム労働とは、週の労働時間が36時間未満の働き方を指します。
そして、オランダの労働人口のおよそ36%がこのパートタイマー。そのうち、女性就業者の約68%がパートタイム労働者です。実は、こうして私もパートタイムで働いてるんですよ」。そう語ってくれたのは、来日28年目になる在日オランダ大使館、広報・教育担当官の桑原マリアさんだ。
「1980年代に不況に喘いでいたオランダでは、失業を避けるため、労働時間を短くし、雇用を分け合うワークシェアリングという考え方が浸透しました。それによりパートタイム雇用が急拡大。その後、1996年にはパートタイマーが、給料や休暇、年金の待遇の面で、フルタイム労働者と差別されることを禁止した法律が制定。4年後には、労働者に労働時間の変更を会社に求める権利を認め、会社は原則としてこれを断れなくなりました。例えば、毎朝、子供を保育園や学校に送ってから出勤したいと上司に申請すれば、出勤時間を変更できるようになるのです。企業主導の日本社会では考えられないかもしれませんね」。
日本のパートタイマーの場合、女性のパート賃金は正社員の7割とも言われ立場が不安定。一方、オランダでは「同一労働、同一賃金」社会である。パートタイムは「非正規雇用」という位置づけではなく、全員がある意味「正社員」という考え方。待遇や時間当たりの賃金は、フルタイマーと同等というわけだ。こうした法律の下、労働者は自分のライフスタイルに合わせて、自由に働く時間を決め、フレキシブルな働き方が可能となるのだ。したがって、女性は出産や子育てのために退職してしまうのではなく、短時間でもパートタイマーとして働きながら、安心して出産や子育てを行なえるのだ。
「おかげで、一時期1.57まで低下したオランダの出生率は、2000年に入ってからは1.70%台を高推移しています」。この数字、2007年の我が国の出生率が1.34%であることを考えれば、なんとも羨ましい限りだ。
保育園の利用は週3日。それを可能にする育児支援
昨年、オランダにいる甥に子供が生まれたという桑原さん。
「私の甥は今年1月から週1日、育児休暇を取るんです。というのもオランダでは同じ雇用者のもとで1年以上働いている場合、1人の子供が生まれるにつき、その子が8歳になるまでに、半年間の育児休業を取得できる制度があります。そして取得者の多くは、1年くらい続けて土日以外に平日1日を休みます。例えば、夫は月曜日、奥さんは金曜日に休暇を分けて取るのです。そうすることで、月曜日は必然と父子だけの濃密な時間が生まれ、父子の大切なコミュニケーションが図れるのです。さらに、子供を保育園に預けるのが、週に3日だけに抑えられ、家計のためにもいいんです」。
オランダは2007年にユニセフが行なった先進21ヶ国の「子供の幸福度調査」で、フィンランドなどの北欧諸国を抑えての堂々1位にランキングしたという。もしかしたらこの結果は、こうしたオランダの労働環境や育児支援制度によって生まれる、家庭や子育て環境の賜物なのかもしれない。日本が学ぶべき点は多そうだ。■



















